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正義はどこに? [医療]

大野病院事件の裁判の傍聴記録が、紫色の顔の友達を助けたいというブログで詳細に書かれています。臨場感ある記録です。ぜひいろんな方に読んでいただきたいと思います。

そして、この記事を通して、いろんなことを考えさせられました。

まずひとつは、冤罪のおそろしさ。自白を強要する警察の捜査の恐ろしさ。自分たちの理屈に合わない証拠を無視したり隠滅したり(?)ということが、実際行われているらしいこと。科学的、論理的思考が欠如しているのでは?。確か、つい最近、冤罪で服役が終わったあと、真犯人が現れたという事件の報道もあったかと思います。

もうひとつは、マスメディアの報道手段の卑劣さです。最近あるある大辞典の捏造問題が取り上げられていますが、あういうことはメディアの人間にとっては日常茶飯事なのだと推測されます。医療過誤をたたいておきならが、報道の間違いや捏造にはさっぱり反省をせず、自分たちは同じ過ちをくりかえし、おもしろければいいというだけの基準で報道し、報道したことで社会に与える影響を省みないその姿勢は、軽蔑に値します。

最近、「お父さんはやってない」「裁判官が日本を滅ぼす」と言う本を読みました。なんだか暗澹たる気持ちになりました。

警察は信じられない。無罪を主張すると、何日も勾留され自白を迫られる。魔女裁判のようです。

裁判官は、真実ではなく、法廷テクニックの結果を判定する。

報道は卑劣。

いったい正義はどこに?

最近、新小児科医のつぶやき、でJBMなるものを取り上げています。JBMとは、Judgement Based Medicineの略で、裁判の判決から考えると、医療はこうあるべきであった、というものです。こうやってみていくと、いかに裁判が医療のことを何も知らずに判決を下しているかがよくわかります。

原告となる患者さん、またはそのご家族の方が「真実をしりたい」というところから、判決は程遠いところにあるのです。

そして、間違った報道、冤罪による被告となったひとの被害。

今回の大野病院のK医師もある意味被害者です。

紫色の顔の友達を助けたい、のブログの管理人の方も、被害者です。

 

それでも紫色の顔の友達を助けたい、の管理人の方は正義を信じて戦っておられます。

どういう状況になろうとも、私たちは自分の正義を信じて戦うしかないのだと、思います。陰ながら、エールを送り続けたいと思います。

 

医療は崩壊しつつあり、

自分のこれからの身の振り方を真剣に考えます。

事態は多くの医師にとって、「ひたすら自分の正義を信じて、燃え尽きるまで働きまくる」という段階を超えてしまいました。いや、まだひたすら働きまくっている医師はたくさんいますが、、、、。

「長期的に、自分の正義を守るためにはどう動くべきか」を考えなければならないと思います。


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大野病院事件初公判 [医療]

1月26日に、大野病院事件の初公判がありました。新聞報道や、いろんなブログでとりあげられています。

この事件は、刑事事件になってはいけないと、私は以前も述べました。

被告となったK医師が無罪を勝ち取ることを心より祈っています。

記録として、Asahi.com マイタウン福島より、冒頭陳述の要旨を書き留めます。http://mytown.asahi.com/fukushima/news.php?k_id=07000000701270005

 -検察側の冒頭陳述(要旨)-

被告は検査の結果、被害者の胎盤は子宮口を覆う全前置胎盤で子宮の前壁から後壁にかけて付着し、第1子出産時の帝王切開のきず跡に及んでいるため癒着の可能性が高いと診断した。無理にはがすと大量出血のリスクがあることは所持する専門書に記載してある。

 県立大野病院は、高度の医療を提供できる医療機関の指定を受けておらず、輸血の確保も物理的に難しいため、過去に受診した前置胎盤患者は設備の充実した他病院に転院させてきた。

 だが、被告は、助産師が「手術は大野病院でしない方がいいのでは」と助言したが、聞き入れなかった。助産師は他の産婦人科医の応援も打診したが、「問題が起きれば双葉厚生病院の医師に来てもらう」と答えた。先輩医師に大量出血した前置胎盤のケースを聴かされ、応援医師の派遣を打診されたが断った。

 被告は麻酔科医に「帝王切開の傷跡に胎盤がかかっているため胎盤が深く食い込んでいるようなら子宮を全摘する」と説明。被害者と夫には子宮摘出の同意を得た。「何かあったら双葉厚生病院の先生を呼ぶ」と説明。この医師には手術当日に電話で「帝王切開の傷に胎盤の一部がかかっている可能性があるので異常があれば午後3時ごろ連絡がいく」と話した。

 被告は手術中、胎盤がとれないため、子宮内壁と胎盤の間に右手指3本を差し入れて剥離(はくり)を始めたが、途中から指が1本も入らなくなった。このため「指より細いクーパーならすき間に差し込むことができるのでは」などと安易に考え、追加血液の要請をしないまま、クーパーを使用した。

 約10分で剥離し終えたが、使用開始から子宮の広範囲でわき出るような出血が始まり、2千ミリリットルだった総出血量は剥離後15分後には7675ミリリットルに。完全に止血できず、子宮摘出を決意したが、血液が足りず血液製剤の到着を待った。その後約1時間で総出血量は1万2085ミリリットルに達した。

 心配した院長が双葉厚生病院の産婦人科医や大野病院の他の外科医の応援を打診したが、被告は断った。被害者が失血死した後、被告は、顔を合わせた院長に「やっちゃった」、助産師には「最悪」などと述べた。

 被告は胎盤剥離でクーパーを使った例を聴いたことがなく、使用は不適切ではと感じたが、「ミスはなかった」と院長に報告し、届け出もしなかった。病理鑑定では、被害者の胎盤は、絨毛(じゅうもう)が子宮筋層まで食い込んだ重度の癒着胎盤。クーパー使用の結果、肉眼でわかる凹凸が生じ、断片にはちぎれたような跡ができていた。

 -弁護士側の冒頭陳述(要旨)-

  本件は薬の種類を間違えたり、医療器具を胎内に残したりといった明白な医療過誤事件と異なる。臨床現場の医師が現場の状況に即して判断して最良と信じる処置を行うしかないのであり、結果から是非を判断はできない。

 検察側の証拠は、(1)胎盤の癒着や程度が争点なのに「胎盤病理」や「周産期医療」の専門家ではなく「一般病理」や「婦人科腫瘍(しゅよう)」の専門家の供述や鑑定に基づいている(2)困難な疾患をもつ患者への施術の是非が問題なのに、専門家の鑑定書や解明に不可欠な弁護側証拠を「不同意」としている(3)検察官調書の一部から被告人に有利な記載部分を削除して証拠請求している――など、問題が多い。

 被告人は過去に1200件の出産を扱い、うち200件が帝王切開。04年7月には全前置胎盤の帝王切開手術も無事終えている。

 本件は、超音波診断などで子宮の後壁に付着した全前置胎盤と診断。患者が「もう1人子供が欲しい」と答えたため、被告は子宮温存を希望していると理解しカルテに記入した。前回の帝王切開の傷跡に胎盤がかかっていたら癒着の可能性が高まるため、慎重に検査した結果、子宮の後壁付着がメーンと考えた。

 被告は子宮マッサージをしながら、手で、三本の指を使い分けつつ胎盤剥離を進めた。半分程度はがした時点ではがれにくくなった。剥離面からにじみ出るような出血が続いていたが、剥離すれば通常、子宮が収縮し、子宮の血管も縮んで止血されるため、胎盤剥離を優先した。

 子宮の母体の動脈と胎盤内の血管とは直接つながっていないため、胎盤をはいでも母体の血管は傷つかない。むしろ胎盤を早く取り去ることを重視し、先の丸いクーパーを使用した。

 子宮は血流が豊富で、前置胎盤だとさらに下膨れしている。このため胎盤を剥離せず子宮動脈を止血するのは大変困難で、クーパーの使用は妥当な医療行為だ。

 剥離後、子宮収縮剤を打っても収縮しなかったため、あらゆる方法で止血措置を行い、血圧の安定と血液の到着を待って子宮摘出した。無事、摘出し、安心した時点で突然、心室細動がおき、蘇生術をしたが亡くなったもので、胎盤剥離の継続と死亡とは因果関係を認めがたい。

 医師法21条はそもそも黙秘権の放棄を医師に迫るもので違憲。大野病院のマニュアルでは、院長に届け出義務を課しており、医師は院長の判断に従ったのみだ。

 なお病理鑑定では、癒着の程度は最も深い部分でも子宮筋層の5分の1程度と浅い癒着だった。

(引用おわり)

 

 


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嗚呼、ER!  How much is it? 〜アメリカ医療現場レポート 4〜 [医療]

さてさて、きましたきました、医療費の明細書が。
11月のERを受診したときの医療費なんですが。

これがさっぱりよくわかりません。
嗚呼、ER!   〜アメリカ医療現場レポート 〜シリーズで書いたように、娘の受けた医療は
1。来院時のバイタルチェック(身長、体重、体温、血圧、脈拍測定)
2。小児科医(レジデントと思われる)の、てきとうな診察
3。点滴挿入、
4。採血、電解質チェック
5。生理食塩水点滴
6。点滴ポンプ使用、管理費(たぶん)
7。50%糖液側管より点滴(ポンプ使用)
8。アイスキャンディー(低血糖のため)
9。親のランチ

ってところでしょうか。
それに対してきた明細は
1。Medical care $240
2。Medical service $2,037
トータル2277ドル、日本円で27万3240円(1ドル@120円として)ってことになります。
うおー、27万円ですか!!
日本のお医者さん、救急で上記の処置って、こんなにしますか?
で、どうもうちの保険だと、これに対して100ドルの支払いでいいらしい。
もしかしたらあとからさらに請求がくるかもしれません。
というのは、どうも明細をみると、保険会社が支払った金額と、このトータルが一致しないのがどういうことかさっぱりわからないんです。
(誰か知ってたら教えて。)
なぞです。
病院の負担、ってことになるのかしら?
とすると、娘がうけた治療は、保険審査で通らない部分があったってことなんでしょうか?
(やっぱり、水をのんでがんばれってことかい?)

ラボの友人に聞いた話ですが、
彼がバイクでこけて、ERを受診したとき、整形外科医がちょろっとみて、
「大丈夫、骨折してないよ!」といっただけで、診察料が数百ドルしたそうです。
つまり整形外科医だから、数分の診察でも高かったらしいのです。
これがローテートのレジデントの診察なら、もっと安いらしいのです。
また、大学病院は保険のカバーが少ない人が結構受診しているので、
そういうひとは、研修医が主に見るようになっているようです。
逆に、そういうところへ、保険がしっかりある人間がかかると、
診察料金が高くなるそうです。つまり、払えない人がたくさんいるから、そのひとのぶんを
払える人にまわしちゃうという、おそろしいやりかたなんですね。
でも、そうしないと、病院がなりたたない、とみんな知っているので、
貧乏な人がいく病院には、ちゃんとした保険を持っている人はなるべくいかないようにするそうです。

何というか、、、格差社会、市場経済を医療に持ち込むとこうなるんだなあというのを
まざまざとみせつけられました。

みなさん、日本もこうなっていいと思いますか?

微妙です。
でも、ある部分は取り入れないといけない状況になってきているのかもしれません。
でもでも、
なんだか、とってもさもしい感じがします。


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脱水の治療から日本の医療を想う [医療]

嗚呼、ER!のエントリーで、脱水の治療は生食でまちがってないよとのコメントをいただきましたので、
いちおう、アメリカのCDC(center for disease control and prevention)の推薦する脱水の治療を掲載しておきますね。たしかに生食は「点滴する場合」の第一選択です。

もっとも、下痢をしているときは乳酸リンゲルのほうが好ましいとありますが。

しかし、思うんですが、
アメリカって、ほんとにORS(oral rehydration solution)が主流なんですね。とにかく飲水!
重度脱水になるまで、点滴をしない方針のようです。つまり、血圧がさがったり頻脈になるまで点滴しないんですね。
そうなると、血管内脱水は明らかなんで、まずバイタルを確保するためには、細胞外液をいれるのは当然っつーか。

日本は点滴をするタイミングが明らかに早いんで、まー、そっくりまねる必要はないんとちゃうかな、と思ったりもするんですが、これはやっぱり古い考えなんでしょうか?

ちなみに中等度脱水の治療をみていただくと、50-100ml/kgの水分を3−4時間ごとで飲ます、ってあるんですけど、、、、
ぴょんちゃんは14kg. あんなにお腹が痛い状態で、腸もさっぱり動いてないのに、700ml−1400mlを3−4時間ごとに飲ますって、結構無理。大人でも無理ちゃうか?
おそるべし、アメリカ医療。ここまで医療費を節約したいのか?

あと、低張液はいれちゃいかん、ってことで、文献が引用してあるんだけど、
2000年のAmerican Journal of Emergency Medicineの文献なんですが、こいつがひどいのね。
1歳半の子供に5%デキストランin waterを40ml/kg、30分で急速静注して、脳浮腫を起こして痙攣重責、死亡させた症例(2例)の報告なんですね。こいつはどっちかっていうと、医療ミスか、殺人かとわたしは思っちまいました。そんなん、ふつうするかー?
こういうのを引用して、低張液はいかん、って言っても、極端すぎて、レベルも低すぎて、よくわからん、というのが私の感想です。基本維持輸液は5%デキストラン+1/2生食だし、日本とやっぱびみょーに違いますね。

そういうわけで、今の日本での考え方の主流をだれかおせーて。

それにしても、、、、
アメリカではお金のある人がいい医療を受けられる、と思っていましたが、そうじゃないとわかってきました。
お金のある人が、今の日本の標準かそれ以下の医療をうけられる、というレベルだと思います。
ちゃんとした保険にはいっていたら、治療を拒否されない、ってだけの話なんだと思いました。

日本のみなさん!
ほんとに日本の医療はすばらしいのよー。
税金をたくさん払うのを覚悟して、いまの医療をまもらないと!!

追記です
ORSのレシピはこちら
http://rehydrate.org/solutions/homemade.htm


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嗚呼、ER! その後 〜アメリカ医療現場レポート 3〜 [医療]

さて、ER受診後ぴょんちゃんはすこし復活しました。が、やっぱり夕方から夜にかけて、吐き気と腹痛がでるんですね、、、。はじめはウィルス性嘔吐症かと思っていたんですが、発熱、下痢はまったくないまま、こういう症状が続くと、アセトン血性嘔吐症?とか私たちは思い始めました。そういういみではグルコースの点滴は聞いた様に思います。

で、こちらでレジデントをしているお友達の日本人ドクターにゾフランをわけていただきました。
なんとこっちではゾフランシロップとかもあって、2歳以下の嘔吐症にはプリンペランではなく、ゾフランを使うそうです!もともとゾフランは抗がん剤の副作用の嘔吐に適応があって、日本ではまだ普通の嘔吐症には保険適応外のはずですが。
ゾフラン、よく効きました!ほんとにぴたっと吐き気も腹痛も止まりました。

で、病日12日目にして、ようやく元気になりました!子供の回復時ってのはほんとに急激に回復しますが、ほんとにほんとに突然回復してしまいました。
ああ、よかった。

それにしても、、、、日本で嘔吐症で12日も長引く事はないよなあ、、、、、。

点滴をしない、っていう医療経済の効率化と、そのために病気が長引いて、両親が交代で半日ずつしか仕事をしない、っていう社会経済のデメリットは、どっちが大きいのだろう??

そもそも、こちらの医者は保険会社から圧力がかかっているのかなあ?医療費を使うと、実際払うのは保険会社だし。(我が家の保険は、ネットワーク内の病院だと10%負担、ネットワーク外だと30%負担、と結構いいやつなんですよね。)
もしみなさま「ジョンQ」をまだ見ていなかったら、ぜひ見てください。アメリカの医療のひずみが描かれています。


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嗚呼ER! ~アメリカ医療現場レポート2~ [医療]

さて、しばらくすると、黒人の女性のドクターが入ってきました。

経過を一通り聞くと、

「これから診察しますが、おしっこがでているので、輸液が必要なほどの脱水ではないと思いますが」

という。おいおい、、、、一日1-2回のなけなしの濃縮尿で大丈夫ってのかい?そこで私とパパは

You would start giving her fluid infusion just before she is dieing!”

「極度の脱水ではない、と言う意味ではそうだと思うが、一週間嘔吐し続けていて、脱水は確かにある。ここ2日水分も食事もとれない状態が続いている。ここが治療をしないでいられるぎりぎりのポイントだと思う。今の状態は明らかに治療が必要な状態だ!」

「私たちは小児科医で、こういう症状の子供を何百、何千と見ているんだ。よくわかっている!!」

と訴えました。すると、

「たしかに、主治医のクリニックの先生から電話ももらっているし、あなたは小児科医で母親でもあるので、それを尊重して輸液をします。」

と言ってくれた。でもさ、とりあえず診察してよ。

で、彼女は聴診はそれなりにしっかり聞いていたようだが、申し訳程度におなかを触って、やわらかいね、と終わり。うーん、、、ちゃんと触診しろよー。やわらかいぺちゃんこのおなか、ってのも所見なんだからさ。(当時、パパはケトン性低血糖症の合併も疑っていたわけでもある)そもそも、なぜおなかの音を聞かない?皮膚のツルゴールの低下は見ないのか?

それでも、輸液してもらえるなら、まあよかろう。診断は自分らで下せるし、と思いつつ、「どれくらい輸液してくれるんですか?」と聞くと、

「ふつう体重あたり10-20mlだけど、今回は多めに40mlしておきましょう」と言って部屋を出て行きました。

40ml/kg???

えー、、っと、それは?私たち聞き取り悪いしさ、とパパとちょっと不可解に思いつつ、点滴を待つことにしました。

待つこと30分?1時間?とにかく待ちました。なんでこんなに点滴の用意に時間がかかるんだろねー?日本だったら点滴が決まってから始まるまではすぐなのにねー。とパパと話しつつ、、、、

ようやく、来ました、点滴が。

生理食塩水、1000mlが!

えー、、、あのうー、、生食?糖は?ちょっとめまいが、、、、。するとパパが「まあ、脱水だからさ、等張液ってことなんじゃない?きっと途中で違うのに変えるんじゃないの?」という。いやー、アメリカ人はそんな丁寧なことせんやろ。

「あのー、グルコースは入れないんですか?」

と聞くと、「ふつうメインのボトルにはいれません。これが普通の輸液です。」と言う。

そして、輸液速度を725ml/hourに設定しました。

725???ですか?うちの娘は3歳14キロなんですけど、、、。循環血液量は1.2リットルちょっとと思われるんですけど、、、、。

「早すぎる!!日本ではこの体重の子供にこんな速さでは絶対輸液しない!!これを全部この速度で入れるのか??」

と、モーレツに抗議しました。すると、全部はいれなくて、40ml/kg=560mlはいったところでおしまいだそうです。それにしても、、、めまいどころか、、、。

「私たちは家で点滴できるから、これを売ってくれ!こんな無茶な輸液おかしい!」などと文句を言い続けました。しかし長時間ERの部屋を占領されるのは困る、そんなに長時間点滴するわけには行かない、とかいわれ、私が自分で速度を変えようとしたこともあり、もめにもめた挙句、時間350mlとなりました。まあ、これなら、、いいでしょう。

ところが、、、今度は点滴の針が、、、入りません。へたくそー!!

いや、手つきは悪くない。こっちは看護婦さんが点滴を刺すらしいのですが、まあ、なれている手つきではある。が、そんなところから、その角度で刺しますか?思わず、、、

「私がしましょうか?あなたよりずっと上手にできるけど」と言ってみましたが、させてくれませんでした>あたりまえ?

思えばぴょんちゃんは、赤ちゃんのときから、肝機能障害、喘息用気管支炎、と採血、点滴が必要なときは、ママかパパが一発さっさと針を刺していたので、こんなに失敗されるのは初めて、、、。はじめは「すぐ終わる」と信じてだまって動かず手を差し出していましたが、失敗されるうちにとうとう泣き出してしまいました、、、。嗚呼、、、、、。私がすればすぐ終わるのに、、、痛くないのに、、、。

わたしもなんだか絶望的な気持ちになってきました。

生理食塩水、点滴速度、、あまりに医療のやり方の違いに、、

そしてこんなに自分を奮い立たせて、思いっきり抗議しないと、まともな治療をしてもらえない現状、、、、私たちが小児科医だからこんなに戦えるけど、これが駐在とかの日本人家族だったら、、、、ほんとに極度の脱水になるまでほっておかれて、そしてショック状態に行うような輸液をされるのであろう、、、

なんとか点滴の針が入りました。採血を同時におこなって(ERだから、ちゃんと電解質くらいはみるみたいです)輸液も入り始め、私たちも落ち着きました。

さて、落ち着いたところで看護婦さんが来て「血糖が低いのでグルコースも側管からいれます」と言いに着ました。ほら、それみろ。「値は?」と聞くと、「42」と。ほら、いわんこっちゃない、だからグルコースを点滴に入れろって言ったんだよ!!"We knew that!!"とはいて捨てるように言わせていただきました。

グルコースが入ると、ぴょんちゃんはようやくうつらうつら眠り始めました。

「もう、何なん?ひどい医療やなー。患者の状態見て考えるってことしないわけ?」と私が言うと、

「しゃーないよ。あいつらはガイドラインってのがあって、それから外れる医療はできないんやから。ガイドラインを作るためのトライアルってのもしっかりやってあるしね。ただ問題は、多くの医者はガイドラインはよく知っているけど、その論理や背景を知らんってことやね。」とパパ。そう、、そうかもね、、、。

しかし、、、アメリカでは医者は死なない程度にしか、患者を診ようとしないんだなー、、、となんだか医療から置き去りにされたような気持ちになりました。

おなかすいたね、どうする?交代で食べに行く?などといっていると、看護婦さんがランチです、とトレイにお昼ご飯を乗せて持ってきました。入院でもないのにお昼ご飯が?長時間いると入院扱いの料金を取られるとか?といろいろ思いつつ、ふたを開けると、、、ハンバーガーとポテト!!あのー?うちの娘はまだ食べられないと思うんですけど?しかもハンバーガー?と思わず大笑いしそうになったところ、もういひとつランチが運ばれてきました。

「あのー?これ、私たち親の分ですか?」と聞くと、「そうよ、ぴょんちゃんはよく眠っているからね」と看護婦さんはウィンクして出て行きました。うーん、アメリカっぽいなあ、でもコストはどこに?とか思いつつ、お腹が減っていた私たちはありがたくいただきました。アメリカって、文句言えば言うほど、こういうサービスはよくなるんだよねー、、、。

 

さて、点滴が終わると、看護婦さんが血糖をはかりに着ました。その辺はちゃんとしてるんですね。で、血糖61。まあ、こんなもんかな、と私たちはおもってましたが、看護婦さんはドクターに報告しにいって、なんとポップサークル(アイスキャンディー)をもってきました。「これを食べてもらって、もう一回血糖を測りましょう!」ぴょんちゃんは、アリスキャンディーをなめなめ、血糖も無事あがり、ドクターたちは「これでもう大丈夫よ!」とにこやか。ははは、、、、。まだぐったりしてるんですけどね。

さらに帰りがけに、ペディアライト1Lを一本くれました。ものはたくさんくれるんですねー。

 

娘の保険はERが一律100ドルということで、100ドル払って帰ってきました。いったい保険がなかったらいくらだったのかしら、、?と思いつつ。友達の息子さんは頭をうって念のためERでCTを取ってもらったら1200ドルって言ってましたが、、、。(もちろん保険でカバーしてもらったそうですが)


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嗚呼、ER! 〜アメリカ医療現場レポート 1〜 [医療]

ぴょんちゃんが先週土曜日の夜から腹痛を訴え、日曜日の夜からげろげろ吐いています。
水曜日までは昼間は元気で夜だけの腹痛、嘔吐だったので、我々夫婦ともに小児科医ゆえ、ウィルス性嘔吐症の診断のもと、ナウゼリン座薬で様子をみておりました。>どうせアメリカの医療なんて何もしてくれないだろうし、、、
しかしながら、毎晩腹痛で何度も目が覚め、嘔気と戦っているため、ぴょんちゃんは消耗してきて、木曜日は一日ぐったり。 座薬で吐き気を押さえても、水分を取ると反射的に吐く様になって、水分も受け付けなくなってきました。
さすがにこれはいかんやろ、と思い、金曜日の朝に、かかりつけのクリニックに電話してみてもらう事になりました。
(点滴を期待して)

しかし、ぴょんちゃんはすこしはおしっこも出ていて、顔色もわるくなかったため、
「ERに行かずにすむよう、座薬で吐き気をおさえてとにかく水分をたくさんとらせてください」
で終わってしまいました。尿はケトン+++だったそうですが、これだけ吐いていればあたりまえと、、、。
しかしねー、、、それは嘔吐初期の頃に言う台詞なのよー。
いまはもう5日目よ!本人はもうしゃべらないし、家でも歩こうともせず、ぐったり消耗しているんですけど、、、。
しかも、きづいた事は、そのクリニック(内科などもあって、建物はでかくて外から見たらとてもきれい)は
どうも診察だけで採血すらそこでできないようなのです。が、がーん、、、そうだったのかあ。

そして、今日土曜日。
昨日使った吐き気止めの座薬が効いて、夜はぐっすり眠れたものの、朝からぐったり。少し水分をとってはみたものの、「お腹痛い、、、」とうずくまって動かなくなってしまいました。
夫と、ER行ってみるか?点滴を頼んでみよう!ということになり、
昨日受診したクリニックの担当医に電話をかけて、事情を説明し、ERにも点滴の必要性の電話を入れてもらう事になりました。(じつはこのときも、かなりわたしは電話で担当医をなじりました。昨日から点滴すべきだったのに、もう丸一週間吐き続けているのをなんと思っとるんか!!などなど。そのおかげで担当医がわざわざERに電話を入れてくれる事のになったのですが、、、、)

さて、小児病院のER につくと、受付をすませます。もちろん、医療保険の登録です。ここで保険に加入していなかったら、診てもらえません。
で、奥の待合室でお待ちください、といわれ、名前とバーコードが何枚も印刷してあるシールのシートをもらいました。(宛名シールみたいなやつね)そちらへいくと、すぐに名前を呼ばれて、体重、血圧、体温、SaO2などを測ってくれました。

そのあと、しばらくして名前を呼ばれ、小児ERの処置室に入っていきました。
ここは個室がいくつもあって、各個室にはERのフル装備がそろっているようです。
一見、小児入院病棟か??と思うくらい広くて部屋がたくさんありました。
個室に通され、看護婦さんが経過を聞きにをきました。そして、「すぐにドクターが来るから」と出て行きました。

づつく


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この州で聞いた話:医療訴訟について [医療]

いつもまいどの新小児科医のつぶやきのブログをよんでいると、
重たい気持ちになってきます。
一体日本の医療はこれからどうなってしまうのでしょう?

アメリカも訴訟大国ですが、
私が今いる州は、医療訴訟を抑制するために、医師を守る州の法律があるそうです。すなわち、患者さんが医療側を訴えようとしたとき、その内容について、3人の医師が評価をして、訴訟すべきかどうか判定するそうなのです。
で、訴訟にあたいすると判断された件のみが、訴訟できるそうなのです。
これはなかなかいいなあと思いました。

もちろん、一般の医療不信に陥った方たちからみれば、
医師同士がかばいあいをするのではないかと疑うでしょうが、
現実的に医師同士はあんまりかばいあったりしません。
むしろ厳しくお互いを評価するほうが多いのではないかと思います。
あえていうなら、みてみぬふりはするかもしれません。
ひどい医者がいると思っても、
それを教育しなおしたり、評価しあったりするシステムがないので、
これまでそのままあえて、何も言わずすごしてきたことが、
かばいあいとうけとめられているのかもしれません。
しかし、
正当に、一定の、現実に即した医療水準をもって、医師同士が評価した場合、
そんなとんでもないことにはあんまりならないと思います。
かばいあうようなこともないと思うし、
そうならないようにすれば、
この州の法律のようなシステムはなかなかいいんじゃないかなあと思ったりします。

すくなくとも、現在みかける、とんでもない判決はへるんじゃないかなあ、、、。

こういう意見は、もちろん医者の立場からの意見なんですが、
裁判はお金も費用もかかりますし、精神的にも大変だと思います。
セカンドオピニオンとして、第三者の医師たちの率直な意見を、
訴訟を起こそうとしている人たちが聞けるのも、
いいことのように思います。


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奈良事件で考えるべきこと [医療]

奈良の県立病院で妊婦さんが分娩中に頭痛を訴え、意識不明になり、転送を18もの病院で断られ、最終的にお亡くなりになったという、悲しい事件がありました。

いつも覗かせてもらっている、新小児科医のつぶやきある産婦人科医のひとりごといなか小児科医、などで詳細、および何日かにわたり、問題が検討されています。

経過をまとめてみます。

1.妊婦さんが分娩中に頭痛をうったえ、意識を失った。(午前0時)産科医と内科医とで診察した上、陣痛に伴う意識消失発作と診断し、経過観察とした。

2.その後痙攣をおこし(午前1時半ごろ)、産科医は子癇発作と考え、その処置を行った。

3.転送が必要と判断し、転送先を探すも18もの病院に断られ、国立循環器センターにようやく搬送された。(午前4時半搬出、午前6時到着)

4.患者さんは脳内出血を併発していて、緊急帝王切開、脳外科による手術がおこなわれた。子供は無事であったが、妊婦さんは後日死亡した。

 

脳内出血が先であったのか、子癇発作の前兆による意識消失+子癇発作およびそれにともなう脳出血、であったのかわかりません。

そして、これが、どれくらいの規模の病院で、どれくらいのスタッフがそろっていたら、どの段階で診断、救命しえたのか、まったくわかりません。

いろいろ議論されていますが、専門外のわたしがそとからこの経過をみると、

きわめて救命が難しかった症例ではないかと思われます。

もちろん、医学的にはどういうアプローチがありえたかの議論はあります。

助けられなかった命を、どうしていれば助けられたのか、そういう可能性はあったのか、目の前の命をひとつ失うたびに、そう模索するのが医者の性と言うものです。

 

しかしながら、それは医者のおごりと言うか、患者さんの要求しすぎというか、そんなに医学はすすんでいません。どうしたって助けられない症例はあるのです。

 この事件で一般に議論すべきことは、医学的にはどうすべきであったかではなく、この患者さんが受け入れてもらえる病院が奈良県になかった、と言う事実です。

そもそも、この患者さんには産科、小児科、脳外科、麻酔科、レントゲン技師、が必要です。夜中にそれだけそろっている病院はどれだけあるでしょう?

全科の医者が夜中も当直していて、いつでも手術ができる病院は、そんなにたくさんありません。わたしが研修医のころは、そいういう病院で研修しましたが、私の地元の県にはそんな病院はありません。

ほんとうの重症の患者さんは、夜中は死ぬしかないな、と思ったことがあります。これは事実だと思います。

24時間365日、全国津々浦々、医療は充実していないのです。

そもそも、充実自体、幻想なのです。

医師の超過勤務を超えに超えた、超過労状態のうえ、いまの医療がなりたっていることを、一体どれほどの、一般の方々がお気づきになっているでしょうか?お気づきになっていたとしても、「お医者さんはたいへんねえ、でもやってもらわないと、こまるしねえ」、くらいの認識ではないかと思います。

でも、崩壊はすぐそこです。もう、日本の医療者は息絶え絶えです。

真剣に、医療システムをたてなおすことを、国民ひとりひとりが考えねばなりません。もちろん、お金がかかります。現在の医療は高額なものばかりです。自己負担の増額や税金の増額は覚悟しなければなりません。

しかし、それもさることながら、政府がそうやって集めたお金を、的確、適切に使えるかどうかが、たいへん大事なことです。国民は政府のすることに、目を見張らなければなりません。

 

一体短期間で、どれくらいのことができるのか、何をしたらいいのか、そもそも医者の絶対数は少ないわけだし、どうしたらいいのかわかりません。

夜中は、みんな覚悟を決める(なにか重病になったら死ぬしかない)ことくらいかもしれません。せめて昼間であれば、助かるのであれば、万々歳、くらいなもんです。

でも、お産は夜中によくありますね、、、、。

夜中のお産は母子とも命を覚悟しなくてはいけないのかもしれません。そもそも、病院で産めることがラッキーになる時代かもしれません。

享受してあたりまえ、の気持ちは捨てるべきです。

しかしながら、市場原理を医療システムに持ち込むのも、私は反対です。

 この建て直しには、時間、お金、人材が膨大にかかることを、みな認識しつつ、長期視野で真剣に取り組むしかないと思います。

 

そして、次世代への教育。

なにを大切に考え、何を自己の主軸として生きていくのか。基本的な物事の考え方。WIN-WINであること。

 この崩壊しかかった医療制度が崩壊するとしても、焼け野原から芽が出るような教育を、われわれは次世代にしなくてはいけません。

 

 

 

 


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大野事件、公判前整理手続き [医療]

大野病院での医療事故の公判前整理手続きで、裁判所から「胎盤の癒着がわかった段階で、大量出血を予見して剥離(はくり)を中止し、子宮を摘出すべきだったか」が主たる争点との考えが初めて示されたそうです。

むむむ、、、。

何か変だと思いませんか?

なぜ、医学知識の乏しい、臨床経験ゼロの人たちが、このことについて論じ合えるのでしょう?

私も医者の端くれですが、専門外の、自分が手を出したこともない、しかも極めてまれな症例についての、ベストな医療なんて、とてもじゃないけど言えません。

もちろん、文献的にはこういう方法がいいらしい、とは言えるかもしれませんが、

文献の選び方、文献の読み方を間違えると落とし穴があるということを、裁判官や検察の方はご存知なんでしょうか?

 

医学的に常軌を逸脱してもおらず、

悪意もなく(善意こそあれ)

高い専門性をもって行われた医療について、

なぜ刑事裁判として、犯罪者かどうか裁かれねばならないのでしょう?

このような裁判が行われること自体に、激しい怒りと絶望を感じます。

 

これについて、「現代のガリレオ裁判」とどなたかがコメントしていましたが、

まったくそのとおりだと思います。

 

 


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