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嗚呼ER! ~アメリカ医療現場レポート2~ [医療]

さて、しばらくすると、黒人の女性のドクターが入ってきました。

経過を一通り聞くと、

「これから診察しますが、おしっこがでているので、輸液が必要なほどの脱水ではないと思いますが」

という。おいおい、、、、一日1-2回のなけなしの濃縮尿で大丈夫ってのかい?そこで私とパパは

You would start giving her fluid infusion just before she is dieing!”

「極度の脱水ではない、と言う意味ではそうだと思うが、一週間嘔吐し続けていて、脱水は確かにある。ここ2日水分も食事もとれない状態が続いている。ここが治療をしないでいられるぎりぎりのポイントだと思う。今の状態は明らかに治療が必要な状態だ!」

「私たちは小児科医で、こういう症状の子供を何百、何千と見ているんだ。よくわかっている!!」

と訴えました。すると、

「たしかに、主治医のクリニックの先生から電話ももらっているし、あなたは小児科医で母親でもあるので、それを尊重して輸液をします。」

と言ってくれた。でもさ、とりあえず診察してよ。

で、彼女は聴診はそれなりにしっかり聞いていたようだが、申し訳程度におなかを触って、やわらかいね、と終わり。うーん、、、ちゃんと触診しろよー。やわらかいぺちゃんこのおなか、ってのも所見なんだからさ。(当時、パパはケトン性低血糖症の合併も疑っていたわけでもある)そもそも、なぜおなかの音を聞かない?皮膚のツルゴールの低下は見ないのか?

それでも、輸液してもらえるなら、まあよかろう。診断は自分らで下せるし、と思いつつ、「どれくらい輸液してくれるんですか?」と聞くと、

「ふつう体重あたり10-20mlだけど、今回は多めに40mlしておきましょう」と言って部屋を出て行きました。

40ml/kg???

えー、、っと、それは?私たち聞き取り悪いしさ、とパパとちょっと不可解に思いつつ、点滴を待つことにしました。

待つこと30分?1時間?とにかく待ちました。なんでこんなに点滴の用意に時間がかかるんだろねー?日本だったら点滴が決まってから始まるまではすぐなのにねー。とパパと話しつつ、、、、

ようやく、来ました、点滴が。

生理食塩水、1000mlが!

えー、、、あのうー、、生食?糖は?ちょっとめまいが、、、、。するとパパが「まあ、脱水だからさ、等張液ってことなんじゃない?きっと途中で違うのに変えるんじゃないの?」という。いやー、アメリカ人はそんな丁寧なことせんやろ。

「あのー、グルコースは入れないんですか?」

と聞くと、「ふつうメインのボトルにはいれません。これが普通の輸液です。」と言う。

そして、輸液速度を725ml/hourに設定しました。

725???ですか?うちの娘は3歳14キロなんですけど、、、。循環血液量は1.2リットルちょっとと思われるんですけど、、、、。

「早すぎる!!日本ではこの体重の子供にこんな速さでは絶対輸液しない!!これを全部この速度で入れるのか??」

と、モーレツに抗議しました。すると、全部はいれなくて、40ml/kg=560mlはいったところでおしまいだそうです。それにしても、、、めまいどころか、、、。

「私たちは家で点滴できるから、これを売ってくれ!こんな無茶な輸液おかしい!」などと文句を言い続けました。しかし長時間ERの部屋を占領されるのは困る、そんなに長時間点滴するわけには行かない、とかいわれ、私が自分で速度を変えようとしたこともあり、もめにもめた挙句、時間350mlとなりました。まあ、これなら、、いいでしょう。

ところが、、、今度は点滴の針が、、、入りません。へたくそー!!

いや、手つきは悪くない。こっちは看護婦さんが点滴を刺すらしいのですが、まあ、なれている手つきではある。が、そんなところから、その角度で刺しますか?思わず、、、

「私がしましょうか?あなたよりずっと上手にできるけど」と言ってみましたが、させてくれませんでした>あたりまえ?

思えばぴょんちゃんは、赤ちゃんのときから、肝機能障害、喘息用気管支炎、と採血、点滴が必要なときは、ママかパパが一発さっさと針を刺していたので、こんなに失敗されるのは初めて、、、。はじめは「すぐ終わる」と信じてだまって動かず手を差し出していましたが、失敗されるうちにとうとう泣き出してしまいました、、、。嗚呼、、、、、。私がすればすぐ終わるのに、、、痛くないのに、、、。

わたしもなんだか絶望的な気持ちになってきました。

生理食塩水、点滴速度、、あまりに医療のやり方の違いに、、

そしてこんなに自分を奮い立たせて、思いっきり抗議しないと、まともな治療をしてもらえない現状、、、、私たちが小児科医だからこんなに戦えるけど、これが駐在とかの日本人家族だったら、、、、ほんとに極度の脱水になるまでほっておかれて、そしてショック状態に行うような輸液をされるのであろう、、、

なんとか点滴の針が入りました。採血を同時におこなって(ERだから、ちゃんと電解質くらいはみるみたいです)輸液も入り始め、私たちも落ち着きました。

さて、落ち着いたところで看護婦さんが来て「血糖が低いのでグルコースも側管からいれます」と言いに着ました。ほら、それみろ。「値は?」と聞くと、「42」と。ほら、いわんこっちゃない、だからグルコースを点滴に入れろって言ったんだよ!!"We knew that!!"とはいて捨てるように言わせていただきました。

グルコースが入ると、ぴょんちゃんはようやくうつらうつら眠り始めました。

「もう、何なん?ひどい医療やなー。患者の状態見て考えるってことしないわけ?」と私が言うと、

「しゃーないよ。あいつらはガイドラインってのがあって、それから外れる医療はできないんやから。ガイドラインを作るためのトライアルってのもしっかりやってあるしね。ただ問題は、多くの医者はガイドラインはよく知っているけど、その論理や背景を知らんってことやね。」とパパ。そう、、そうかもね、、、。

しかし、、、アメリカでは医者は死なない程度にしか、患者を診ようとしないんだなー、、、となんだか医療から置き去りにされたような気持ちになりました。

おなかすいたね、どうする?交代で食べに行く?などといっていると、看護婦さんがランチです、とトレイにお昼ご飯を乗せて持ってきました。入院でもないのにお昼ご飯が?長時間いると入院扱いの料金を取られるとか?といろいろ思いつつ、ふたを開けると、、、ハンバーガーとポテト!!あのー?うちの娘はまだ食べられないと思うんですけど?しかもハンバーガー?と思わず大笑いしそうになったところ、もういひとつランチが運ばれてきました。

「あのー?これ、私たち親の分ですか?」と聞くと、「そうよ、ぴょんちゃんはよく眠っているからね」と看護婦さんはウィンクして出て行きました。うーん、アメリカっぽいなあ、でもコストはどこに?とか思いつつ、お腹が減っていた私たちはありがたくいただきました。アメリカって、文句言えば言うほど、こういうサービスはよくなるんだよねー、、、。

 

さて、点滴が終わると、看護婦さんが血糖をはかりに着ました。その辺はちゃんとしてるんですね。で、血糖61。まあ、こんなもんかな、と私たちはおもってましたが、看護婦さんはドクターに報告しにいって、なんとポップサークル(アイスキャンディー)をもってきました。「これを食べてもらって、もう一回血糖を測りましょう!」ぴょんちゃんは、アリスキャンディーをなめなめ、血糖も無事あがり、ドクターたちは「これでもう大丈夫よ!」とにこやか。ははは、、、、。まだぐったりしてるんですけどね。

さらに帰りがけに、ペディアライト1Lを一本くれました。ものはたくさんくれるんですねー。

 

娘の保険はERが一律100ドルということで、100ドル払って帰ってきました。いったい保険がなかったらいくらだったのかしら、、?と思いつつ。友達の息子さんは頭をうって念のためERでCTを取ってもらったら1200ドルって言ってましたが、、、。(もちろん保険でカバーしてもらったそうですが)


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