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厚生労働省にパブコメをおくろう! [医療]

医療の安全の確保に向けた医療事故による死亡の原因究明・再発防止等の在り方に関する試案-第三次試案-
にたいするパブリックコメントの〆切が迫っています。

ぜひみなさん読んで意見を送りましょう!第三次試案もこちらからダウンロードして読めます。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=495080001&OBJCD=&GROUP

参照ブログ「新小児科医のつぶやき」
http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20080505

参考のブログ一覧はこちらから。「産科医療のこれから」
http://obgy.typepad.jp/blog/2008/05/post-a9a2.html


細かい事はいろいろありますが、わたしがかいつまんで問題点をあげますと、
1。医療事故届出の基準が明瞭でない。(本文には明瞭と書いてありますが、わたしには明瞭に思えません)
2。この調査委員会により警察が抑制的になるという補償はない。
3。ご遺族に対する対応が欠如している。

とくに2.3について、詳細を以下でお読みいただければ幸いです。
(以下MRICより転載)


*****

 Medical Research Information Center (MRIC) メルマガ 臨時 vol 53

  ■□ 刑事捜査抑制の保障無し—法務省・警察庁は文書を明確に否定 □■
  
           国立病院機構名古屋医療センター 産婦人科 野村麻実



 医療安全調査委員会の第三次試案を、医師の皆さんは調査委員会の結論が出る
までは警察の捜査がストップされると、期待してはおられないでしょうか。そう
お考えになるのも当然だと思います。第三次試案を読めば、そのように受け取れ
る記述があり、また日本医師会もそのような説明を会員にしているからです。と
ころが、そのような期待は医師側の勝手な解釈であることが、先日の国会質疑で
明らかになりました。警察はたとえ調査機関の通知がなくても捜査することを、
刑事局長が明言したのです。この答弁で、第三次試案には警察の捜査をストップ
させるような法的根拠がまったくない事実を、私たちは突き付けられました。

 国会質疑の模様をご紹介しながら、今浮かび上がっている問題点を述べてみた
いと思います。

 4月22日、決算行政監視委員会第四分科会において、衆議院議員で「医療現場
の危機打開と再建をめざす国会議員連盟」に参加している橋本岳議員が、第三次
試案について国会質疑を行いました。その内容はインターネット上の録画
(http
://www.shugiintv.go.jp/jp/wmpdyna.asx?deli_id=39012&media_type=wn&
lang=j&spkid=11744&time=02:39:37.1)で見ることができます。

 質疑の相手は、法務省・警察庁の局長であり、主な論点は、厚労省と警察庁あ
るいは法務省の間で交わされた「文書」の有無です。なぜ文書の有無が論点になっ
たか。それは、第三次試案の記載だけでは、医師が法的に守られるのかどうかが
分かりにくく、調査委員会の結論が出るまで警察の捜査がストップされるという
ことが文書で示されているかどうかを、省庁間の明らかな合意を明らかにするの
が目的でした。

 橋本議員はまず、4月3日の日経メディカルオンラインの記事
(http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/200804/505980.html
に、「法務局や検察庁などからは、この案の公表について了解する旨の覚え書き
を得ている」との記載があったことを基に、省庁間で交わされた文書の有無を確
認しました。すると法務省・警察庁は、この第三次試案について一切の文書を取
り交わしたことがないと回答しました。

 この記事内容そのものは記者会見場での出来事で、私たち現場医師に事の詳細
を知ることはできませんし、大した問題ではありませんが、この答弁自体は非常
に重要だと考えられます。実はこれまで「文書」の存在を匂わせ、警察の捜査が
ストップされるような両省の合意があると受け止められる記事が、日本医師会よ
り何度か出されていたからです。

 たとえば、日医ニュース第1117号(平成20年3月20日号)の中で木下勝之・日
本医師会常任理事の名前で出された「刑事訴追からの不安を取り除くための取り
組み —その4— —新しい死因究明制度に反対する意見に対して—」と題する記
事の中に、文書の存在を示唆する「明文化」「明記」という言葉が2度出てきま
す。

 1カ所目は、質問2の回答部分です。原文では「一方、委員会の判断に基づき警
察に通知が行なわれない事例に関しては、訓告結果が調査報告書として遺族に渡っ
て、遺族が警察へ行き刑事罰を主張しても、捜査機関は、調査委員会の医学的な
判断を尊重して、原則として捜査を開始しないことが明文化されています」となっ
ています。

 2カ所目は、質問3、4に対する回答部分で「繰り返すまでも無く、医療関係者
を中心とする調査委員会から捜査機関へ通知される事例は、極めて限定的な「重
大な過失」事例だけであり、通知されない事案には、原則として捜査機関は関与
しないことが明記されている」と記載された部分です。

 このニュースを読んだ医師らは、「厚労省は法務省・警察庁との間で、調査委
員会の通知なしには刑事捜査を開始しないという内容の合意の文書なり覚書を作
成した」と受け取ります。しかし、このたび法務省と警察庁は合意文書の存在を
きっぱり否定したのですから、上記は医師の勝手な希望的観測に過ぎなかったこ
とになってしまいました。

 また木下理事は日本医事新報No.4381(2008年4月12日)p11の記事で「故意に準
じる重大な過失、隠蔽、改竄、リピーター以外は捜査機関に提出されず、それ以
外の報告書も刑事処分には利用しないことを警察庁、法務省も了解済みであるこ
とを説明」と明記し、日本医事新報No.4381(2008年4月12日)p12-15においては
「報告書は遺族に返すので民事訴訟への使用を制限するのは難しいが、刑事処分
には持っていかないことを警視庁、法務省も了解している」と説明しています。
これらは、前述した警察庁の答弁とはまったく合致しません。

 木下理事の説明は客観的には誤りであると言わざるを得ませんが、これは医師
会の責任なのでしょうか。 まさか、医師会が意図的に会員医師らを欺くとは思
えず、医師会が厚労省から虚偽の説明を受けて、誤解してしまったとしか考えら
れません。つまり医師会は騙されたのではないでしょうか。医師会は特に法的な
問題点に関して説明を受ける立場にありますが、法務省・警察庁から説明を日医
は受けてきたのでしょうか?受けていなければ、関係省庁との調整を行う厚労省
の怠慢、いや欺罔だと言ってもいいでしょう。

 そもそも、仮に第三次試案の別紙3「捜査機関との関係について」が法務省・
警察庁との合意に基づいて発表されたものであるとしても、その内容は実のとこ
ろ「遺族から告訴があった場合には、警察は捜査に着手することとなる」(別紙
3問2の答え)わけで、現状と何も変わらないことを明記してあるだけです。22日
の国会質疑においても警察庁米田刑事局長は「遺族の方々には訴える権利があり、
警察としては捜査する責務があり、捜査せざるを得ない」「(委員会が通知に及
ばないという結論を出した場合にでも)個別の事件の判断で遺族の方々の意思と
いうものがもちろんあるから、捜査するしないについては言及できない」旨の答
弁を行っています。つまり別紙3は医師に過剰な期待を抱かせるべく、形式上
「文書」にしてあるに過ぎません。

 厚労省は「文書がある」と日医には嘘をついてきたはずだと思うのです。だか
ら冒頭の日経メディカル記事の記者会見でわからないなりに「文書」「覚書」な
りとにかくそれ風のことを嘘ではないけれどいわねばならなかったのだと思いま
す。さすがに嘘は言わなかったでしょう。しかし勘違いさせることのできる言葉
を並べたはずです。言いもしないことが、メモされるはずがないのです。報じら
れたことそのものよりも重大であったのは現場医師にとって「厚労省は誠意がな
い」と心から確信できる事実そのものだったと私は考えています。

 医療安全委員会に関わる関係省庁は厚労省だけではありません。次回試案から
は、法務省・検察庁に加えて、日医も入った形での試案作りをすべきではないで
しょうか。でなければ、今後も同様のこと、つまり日医や医師が騙されるような
事態が起きる可能性が否定できず、あまりにも危険すぎて論議の対象にさえでき
ません。

 医療安全委員会をその理念どおり運用するためには、刑法を改正または特別法
を制定して、医療過誤に関する業務上過失致死傷罪[刑法211条1項]を親告罪
にするとともに、刑事訴訟法を改正または特別法を制定し、医療過誤案件に関し
ては、医療安全調査委員会の「刑事手続き相当」の意見がない限り、捜査機関は
捜査に着手できず、また検察官は起訴できないようにすることが必要です。法務
省・検察庁の協力をオブザーバー程度で終わらせないようにするためにも、また
厚労省が「自らの権限拡大を狙っている」と勘繰られないためにも、三者の間で
協議をより密におこなうことが課題であると考えられます。

 同様に、民事訴訟の乱発抑制のためには、民事訴訟法を改正または特別法を制
定して、医療過誤案件に関しては、訴訟提起前に裁判所の民事調停ないし認定A
DRの手続きを経ることを義務化し、そこでは医療安全調査委員会の報告書をも
とに紛争解決を図るものとすることなど、法的な対策を講じていただきたいと考
えております。


著者ご略歴
平成4年4月 名古屋大学医学部入学、平成10年3月同卒業
平成10年 岡崎市民病院勤務
平成13年 名古屋大学附属病院勤務
平成14年 名古屋大学大学院医学研究科産婦人科学入学
平成17年 名古屋大学大学院医学研究科産婦人科学卒業
平成17年 津島市民病院勤務
平成19年 国立名古屋医療センター勤務
産婦人科認定医 医学博士


Medical Research Information Center (MRIC) メルマガMRIC臨時 vol 56

   □■ モデル事業で遺族の多くが納得していない ■□

           国立病院機構 名古屋医療センター
           産婦人科 野村麻実


医師会は厚労省に騙されている──。4月28日、このようなタイトルの文章を、
「MRICメールマガジン」や「日経メディカルオンライン」などの媒体に掲載して
いただきました。この記事で私は、「調査委員会の結論が出るまで警察の捜査が
ストップするというのは単なる医師側の誤解だ」と指摘いたしました。なぜなら
警察庁は、「遺族の告訴などがあれば、動かざるを得ない」と国会の場で証言し
ているからです。

 そこで、次に気になるのは、警察が調査委員会の結論が出る前に動く可能性が
どの程度あるのか、という点です。厚労省には、そのようなケースは実際にはほ
とんど起こらないという楽観的な考えがあるかもしれません。しかし、現在行わ
れているモデル事業からは、そういった事態がむしろ頻発する可能性があるとい
う事実が浮かび上がっています。今回の記事では、そのことをご説明したいと思
います。

 まずはおさらいです。4月4日に行われた厚生労働委員会での岡本充功議員の質

http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009716920
080404004.htm?OpenDocument)において、「これ(調査委員会の調査)が迅速に
進まない場合には、遺族の早く解決をしてくれという願いもあれば、当然警察は
捜査に乗り出さざるを得ないという理解でよろしいのか」という岡本議員の質問
に、米田刑事局長は「おっしゃるとおりでございます」と答えています。調査委
員会の結論が出るまで警察の捜査がストップするというのは単なる医師側の誤解
だったわけで、第三次試案は、私たち現場医師が医師会から説明されていた仕組
みとは大幅に違っていました。

 そうすると、「ならば迅速に医療安全調査委員会が動けばいいではないか」
「医療者側がきちんとやりなさい」という声も出てくるでしょう。ところが、実
際はそうはいかないことが、皆さんもご存知の「診療行為に関連した死亡の調査
分析モデル事業」で判明しています。この事業は、現在厚労省で検討されている
調査委員会の試験運用とも言うべき事業で、平成17年9月1日より開始されており、
この2年半ほどの間に計66事例(5月1日時点)を扱っています。

 モデル事業には色々な問題があるのですが、ひとつの問題は終了するまでに時
間がかかり過ぎていることが挙げられます。調査結果を遺族に説明するまでに要
した期間は、モデル事業中央事務局の最新(5月1日時点)の情報で平均10.1カ月
(48例)となっています。モデル事業に関わったある医師に聞きますと、関与し
た案件2件のうち、1件は家族に結果報告するまで1年6カ月を要し、遺族から「ど
うしてこんなに時間がかかったのか」とクレームを受け、もう1件も調査開始か
ら1年を超えていますがまだ報告できていないということです。さらに、愛知の
例では、モデル事業の途中にご遺族が結局刑事告訴をして打ち切りとなってしまっ
た例がありました。

 この点に関して、厚労省の検討会(診療行為に関連した死亡に係る死因究明等
の在り方に関する検討会)の資料にもありますが、「モデル事業から評価結果の
報告を受けるまでの期間が長く、その間、遺族に対して十分な死因の説明ができ
なかったため、遺族との関係が悪化したとの報告もあった」
http://www-bm.mhlw.go.jp/shingi/2007/06/dl/s0627-6a.pdf)と指摘されて
います。また、先日の朝日新聞の記事
http://www.asahi.com/national/update/0426/OSK200804260078.html)で、
「司法解剖の結果が開示されるまでに時間がかかりることが訴訟の一因になって
いる」という日本法医学会での発表が報じられています。上記で紹介した岡本議
員の指摘は、杞憂にとどまらないのではないでしょうか。

 重要な問題は他にもあります。調査結果が判明しても、遺族が納得してくれな
い可能性が非常に高いことです。大阪府モデル事業の調整看護師の話では、彼女
が担当したモデル事業での案件8例の内、調査報告終了後に遺族の納得が得られ
たのはたった2件しかなかったそうです。大阪府モデル事業の地域代表者である
阪大法医学教授・的場梁次氏が「2年間で14例調査が終わったが、遺族の納得を
得られたのは半数行かない」と以前に言われたそうですが、その具体的数字のあ
まりの低さに驚きました。モデル事業でこれだけ遺族の納得が得られないのです
から、第三次試案の調査委員会を制度化したところで、民事・刑事訴訟の抑制に
つながるとは到底思えません。

 日本医師会の木下理事は、医療安全委員会をアピールするために涙ぐましいほ
どの努力を行っておられます。「刑事訴追からの不安を取り除くための取り組み」
と題して、その1を日医ニュース第 1110号 (2007年12月5日発行)に掲載したの
を皮切りに、その2、その3、その4と幾度となくPRして来られました。前回の記
事(http://mric.tanaka.md/2008/04/28/_vol_52_1.html#more)でも述べました
が、その内容が客観的に見て虚偽に満ち医師を欺くものになり、挙句の果てに警
察庁、法務省から「文書を交わしたことはございません」と答弁されてしまうの
では、あまりにも浮かばれません。

 5月1日日本産科婦人科学会は「医療の安全の確保に向けた医療事故による死亡
の原因究明・再発防止等の在り方に関する試案 —第三次試案」に対する意見と
要望(http://www.jsog.or.jp/news/pdf/daisanjishian_20080501.pdf)の中で
「この制度は捜査機関が調査委員会の判断を優先させることを確実に保証し、加
えて、遺族から警察に告訴が行われた場合や調査報告が遅れた場合に、警察が独
自に捜査を始め、誤った判断で過失を認定し刑事訴追を行うことも防止できなけ
ればならない」旨主張しており、また木下先生の4回にも及ぶ呼びかけの題名
「刑事訴追からの不安を取り除くための取り組み」からも現場医療者にとって、
委員会設立に譲れない最重要事項であることは間違いありません。

 厚労省は医師と医師会に対し、この制度のリスクとベネフィットを客観的に説
明し、その上で再度議論を進めていくべきであると申し上げます。




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コメント 3

aucun cou

刑法209~211条の改正もよろしくって!送りましたよ!
救命・治療、頑張ったけど、結果が悪くて逮捕じゃ、堪らんもん!
by aucun cou (2008-05-06 02:36) 

山口(産婦人科)

とにかく「これじゃ大野病院産婦人科医逮捕事件は防げん!」というのが私の言い分。一番シンプルだもんね。

患者遺族の感情を慰撫するには、真相解明じゃなくグリーフワークが必要だと思うのに、ごっちゃになっているというのも問題です。
by 山口(産婦人科) (2008-05-06 13:57) 

pyonkichi

aucun couさま
ありがとうございまーす!わたしもなんとか送りました!

山口さま
そうなんです、わたしもそう思うのです。
遺族との対話を受け持つ部門も併設すべきだと思うのです。ADRを外注にして、「連携をとって」などというのではなく、、、。
by pyonkichi (2008-05-06 21:42) 

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